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「まずい給食」はなぜ配られたのか…解決編 読売オンライン 深読みチャンネル



女子栄養大名誉教授 金田雅代
2017年10月30日 読売新聞社

神奈川県大磯町の中学校で「まずい給食」が大量に残された問題をきっかけに、いくつかの議論が巻き起こった。その一つは「学校給食は『おいしさ』だけを問うべきなのか」というものだ。前回( 「まずい給食」はなぜ配られたのか )のインタビューで「給食はファミレスとは違う」と論じた女子栄養大名誉教授の金田雅代さんに、給食の「あるべき姿」を提言してもらった。(聞き手 読売新聞メディア局編集部 河合良昭)

給食は健康を守る“先行投資”

給食は、子どもたちが好きな料理だけを与えるものでも、空腹を満たすためだけのものでもありません。学校給食法にも書かれていますが、健康のために適切な栄養を取らせ、「望ましい食習慣」を身に付けさせ、伝統的な食文化を学ばせるなど、様々な役割があります。
昔なら家庭でやってきたことを、学校給食が代わりにやるようになったのです。もし、保護者が「給食費を払っているのだから、好きなものだけを食べさせろ」と考えていたり、自治体が「弁当を配れば、それでいいだろう」などと考えたりしているなら、今回の大磯町の問題を契機に認識を改めたほうがよいでしょう。
給食にご飯などの主食があり、野菜があり、汁物があるのは、栄養のバランスがとれた「望ましい食事」の姿を教えるためでもあります。子どもの頃に、こうした食事をとる習慣を身に付けておかないと、学校や親のもとを離れ、一人暮らしをしたときなどに、好きなものだけを食べるようになりがちです。その結果、体重が不健康なレベルまで増え、栄養バランスが偏って生活習慣病になるリスクが高まります。
国や自治体にとっては、将来の医療費増大を防ぐために、給食が“先行投資”になっている、と考えることもできると思います。
財政に余裕のない自治体では、給食室や給食センターを設置する予算がないため、(大磯町のような)デリバリー式を採用せざるをえないところもあります。しかし、給食は将来にわたる健康対策の初めの一歩でもあるのです。
自治体の方にはこの点を理解してもらい、予算の使い方を工夫していただいて、なるべく学校内に調理する施設を作るか、給食センター式にしてもらえればと期待しています。「温かい給食」を提供できるようになり、子どもたちにおいしく感じてもらえると思うからです。

地場産物を給食に

子どもたちがおいしく感じる食材や料理の幅を広げていくことも大切です。私はそのカギの一つは、地場産物の活用だと思っています。
「地元の子どもたちのために」と生産者が特に質のよい品を提供してくれれば、食材そのものの良さを味わうことができて、それまで苦手だった食材を好きになる可能性もあります。
地場産物は仕入れ値が割高なケースもありますが、例えば、東京都小平市は、給食用に地場野菜を購入する際には、代金の一部を補助しています。国の食育推進基本計画が、地場産物を給食に使用する割合を増やすことを目標に掲げていることも背景にあるのでしょう。

あと5分、給食の時間を!

子どもたちの好き嫌いをなくすために、もう一つ提言したいのは「あと5分でよいので給食の時間を延ばしてほしい」ということです。苦手なものを食べさせる指導は「早く食べろ」では駄目なのです。時間をかけ、根気よく教師が付き合って克服させてあげなければなりません。
給食時間の延長については教育現場からの反対が予想されます。教師は決められ時間内で授業をこなさなければならず、他の業務もあって忙しいからです。デリバリー式の給食を、配膳や後片付けが簡単で時間短縮になるから歓迎する――という教師の声を聞いたこともあります。
そんなとき、私は教師たちに「給食の時間には、授業中とは違う子どもたちの姿、心を開いた本当の子どもの姿を見ることができる」と話します。社会人でも、職場では言えない本音が食事の席や酒席では言えることがあります。そこでその人の本当の良さがわかることもあるでしょう。授業で忙しいからこそ、教師たちには、給食の時間に子どもたちとの触れ合いを大切にしてほしいのです。(談)


プロフィール
金田 雅代( かねだ・まさよ )
 1944年、岐阜県生まれ。同県多治見市で管理栄養士として学校や保育園の給食に30年携わった後、文部科学省の学校給食調査官、女子栄養大短期大学部教授を務めた。